先日、個別にご質問が届きましたので、このサイトを通じてお話しさせて頂きます。
- 働き方改革は実施されていますか?
- 働きやすい環境を整えるために待遇面の改善はどのようにしていますか?
- アドバイスを頂けると幸いです。
というご質問でした。K工業のK様、誠にありがとうございます。
カネと休みが欲しいヤツは来なくてよろし!
働き方改革は独自の考え方でやっていますが、待遇面の改善はしていません。
なぜなら、待遇面を改善しても応募は来ませんし、待遇改善でパフォーマンスや従業員満足度は上がるかもしれませんが、それは一時的に過ぎないと考えているからです。
今回は求人採用面にフォーカスしますね。
たとえば、私が専属人事をやっている工事会社では、去年あたりから「原則、給料や休み、残業や休日出勤のことを細かく聞いてくる人は採用しない」という方針でやっています。(以前は違いましたけどね。)
給料で判断するなら、休みの多さで判断するなら、残業や夜勤、休日出勤が嫌なら、、どうぞヨソへ行ってくださいと事前にアナウンスしています。
なぜなら、私たちが定義する「働き方改革」とは異なりますし、採用コンセプトも異なるからです。
経営者と私の、現在の働き方改革の共通認識は「待遇面を改善してもパフォーマンスは上がらない」という考え方です。
もちろん、有給休暇の取得等、守らなけらばならない法律はキッチリと守らなければなりません。
が、法律を盾に権利を主張してきそうな人は”サヨウナラ”の方針です。「カネで来る者はカネで去る」という価値観があるからです。
それを踏まえて、応募してきてくれる人は、どんな学歴や経歴であろうと大歓迎します。なぜなら、採用コンセプトをしっかり理解してくれているからです。
待遇面をアピールしても人は来ない。むしろ…
人材を確保するために待遇面の改善はしません。理由は3つあります。
1つ目は「どの会社もやっているから」です。
どの会社も賃金を上げたり、休みを増やしたりしています。だからウチもやろう!とは思っていません。本質的な部分はそこではないからです。理由は後述します。
2つ目は「待遇競争に参加したら自分の首を絞めることになるから」です。
ネットの求人広告を見ていると待遇面アピール合戦です。合戦に参加すれば、中小零細企業だったらたちまち経営を圧迫します。
たとえば「賃金を上げて募集しよう!」そう思ったらすぐにでも実行できるでしょう。しかし、景気が悪化し業績が下がれば人件費が重くのしかかります。
簡単に減給するような会社はいくらでも存在しますが、ウチでは「給料は絶対に下げたらダメ!中小零細は給料を下げたら終わり!」という経営者の堅い信念がありますから、給与面は特に慎重です。
3つ目は一番重要なんですが「モチベーションの低い人材が集まりやすいから」です。
これはブログで何度も指摘していますので、ご理解頂けるかと思います。
じゃあ、どうすればいいの?
ってことですが、答えはとてもシンプルです。
あなたの会社で働いたときに、給料や休み、福利厚生以外で得られるものは何か?
を考え、売りにしていくことです。
シンプルだけど難しい?
確かにそうですね。めちゃくちゃ必死に考えなければなりません。大変です。
ですが、考えたら考えただけの見返りがあると私は感じています。
カネは要らない!でも〇〇は欲しい…
よく周りを見渡せば、
- お金を払ってまで得たいもの、
- お金を払ってでも得られないもの、
たくさんありますよね?
他にはない、他では得られないスキルやネームバリューなどですね。
たとえば京都では、有名で格式の高い料亭がたくさんあります。そこには多くの料理人の見習いが修行をするために門を叩きます。
その料理の技術を盗むために、そこで修業したという実績が欲しいために、皆がこぞって押し寄せるわけです。
その人たちって、給料が少ないだとか、もっと休みが欲しいだとか、言ってますかね?
逆に、修行中の身とはいえ、多少なりとも給料や休みをもらえるわけですよ?
私だったら「ありがたや~」ですよ。
むしろ、本当は誰にも教えたくないような技術を、お金と休暇をもらってまで得られるのですから、そんな美味しい話しはないでしょう。
(私なんて、あるスキルを手に入れるために某会社にウン百万円と支払って寝る時間を割いて勉強しているんですよ!それを、お金をもらいながらそのスキルが手に入ると思ったら…うわぁ~ウキウキしてきちゃいました!)
御社の求人、会社の価値下げてますよ?
逆に私たちは、なかなか人が集まってくれない、応募が無い。だからつい”求人で待遇面を前面に押し出してしまう”といったことをしてしまいがちです。
それが結果、会社の価値を下げていると思いませんか?
あなたの会社で働く価値とは「待遇」でしょうか?あなたの会社に入社したら、賃金と休みしか得られないのでしょうか?
もし、待遇面を上げて採用したとしても、それが当たり前になったら
- 給料上がんねぇなぁこの会社
- 給料安いな~
- 休み少ねぇな~、ブラックかよ!
そうやって、いつかどこかで必ず不満をぶちまけるわけですよ?
もちろん、待遇面が優れているからこそ価値が高い側面もあります。しかし、それは大企業のように圧倒的にやらなければなりません。
結局は、待遇面を前面に押し出して求人すると「給料をもらうための仕事」、「休みをもらうための仕事」になっちゃうわけです。
待遇面を改善しても応募が来ない。待遇面で選ばれない?
だったら、それ以外で得られるものをアピールして、その人向けに求人をしていったほうが良くないですか?
求人採用コンセプトを掲げよう
- あなたの会社で、唯一得られるものは何でしょうか?
- 他のどの会社にも負けない「得られるもの」とは?
それらをコンセプトとして掲げ、発信していったとき、応募してくる人材の層が変わることに気づくでしょう。
たとえば、私がかかわっている工事会社で得られるものは、給料でもなく休みでもなく技術力です。
もちろん給料やお休みはしっかりともらえるわけですが、フォーカスする部分はそこではありません。
楽しさやアットホームな側面をアピールしているわけでもありません(多少はしていますけれど)。
将来にわたって、ずっと使えるスキルが得られるのです。しかもレベルの高いスキルを、他のどの会社よりも得られるチャンスがあるのです。
それを信じてもらうだけのプロセスと根拠を示している。ということです。
コンセプトの無い求人は存在しないのも同じ
コンセプトの無い求人は、灯りの無い灯台のようなものです。誰も寄ってきません。
採用したいターゲットをひきつけるような灯りをともし、暗闇で彷徨っている若者達に目指す方向を示さなくてはなりません。
そして、ありきたりなコンセプトはネオン街の小さな灯りの1つにしか過ぎません。煌々と輝くネオン街の小さな灯は気づかれない。つまり存在しないのも同じです。
それらを避けるためには、あなたの会社で唯一得られるもの、そして、他のどの会社にも負けない、得られるものを示していきましょう。
定量的と定性的
ですから私の場合、求人アプローチは「定量的」な面にフォーカスするのではなく、「定性的」な面にフォーカスします。
「定量的」とは数値や数量で表せるものをいいます。一方で「定性的」とは数値や数量で表せない、性質的なものです。
例えば、待遇面などの労働条件は「定量的」です。給料の額であるとか、休日の日数、通勤時間などです。
定量的なものは、量れるので競争が激化します。差別化もしにくいです。たとえばヨソの会社の給料が30万円だから、ウチは33万円ってしたところで、たかが知れています。
少しくらい差別化したところで何のパワーもありません。むしろ、採用するための本質がズレてしまいます。
一方で定性的な面とは、例えば魅力や個性です。それらは数値で表すことがなかなかできません。
もちろん数値化できるようなものもありますが、魅力や個性は、生まれ持ったものや、その会社独自で築かれた性質的なものがほとんどなので、過度な競争を避けることができますし、差別化することができます。
ですから、待遇面などの労働条件以外のものにフォーカスしていくわけです。
極論を言わせてもらえば、労働条件なんて、雇用契約時の最終確認事項として提示してもいいくらいです。
ですが、条件面を先に提示するから”それが基準値”になってしまうのです。
大企業のように、好待遇で誘致して、”不景気で業績が低下したら容赦なく雇用調整する”という目的なら別ですが、中小零細企業はそんなこと簡単にできません。地元企業なら評判を落としかねません。
将来的に会社の右腕的存在として人材を採用していくという目的なら、尚さら”定性的なものをコンセプトとして”採用しなければなりません。
本当の働き方改革とは
私たちは現在、若者を中心に採用活動をおこなっていますが、大きな課題は、若者たちの意識を変えていくことです(もちろん私の意識も変えていかなければなりません)。
最近の若者は(若者だけではありませんが)、
- 残業したくない、
- 休日出勤は嫌だ、
- 休みがなければ仕事が続けられない、
そう口にします。
仕事は悪だ。会社もブラックだ。そんな意識さえ感じます(どちらかと言うと若者は無知な場合が多いので、メディアや周囲の人間の影響が大きいでしょうね。)。
それはそれでいいかもしれません。(いや、よくないです)
もちろん、悪しき習慣は排除して、働きやすいよう時代の流れに合わせて行かなければなりません。
残業を減らす、休日を増やす、それはそれで必要なことです。
ですが、「休むために仕事をする」、「早く帰りたいがために残業をしない」では、本質がズレてしまいます。
本質は「仕事のパフォーマンスを上げるために休む」、「ムダな時間を省き効率を上げるために残業をしない」ですよね?
じゃないと、仕事が「ただただ時間を消費するためのもの」になってしまいませんか?
のらりくらりと仕事をして定時になるのを待つ、週末が来るのを待つ。そんな考えを一生続けさせるつもりでしょうか?
若者達がそういう考えで仕事をし、”のらりくらり”している間に、世界中の若者がどれだけ必死に働いているでしょうか?
先進国に追いつけ追い越せ精神のある、東南アジアの彼らを見ていると本当に危機感を感じます。
そう思うと、将来的に仕事はAIや外国人に奪われ、日本の若者はずーっと彼らにコキ使われ、要らなくなったらポイ捨てされる存在になるかもしれません(日本から外国に出稼ぎに行かなければならない時がやってくるかもしれません)。
既にあなたも、そんなシグナルも感じていることでしょう。
ですが、日本の未来を背負い、明るくするのは、今の若者たちです。
残業を減らす、休みを増やす、賃金を上る、それはそれで良いことだと思います。仕事もシステム化すれば、生産性は向上するかもしれません。
しかし、効果は短期的に過ぎないと私は思います。なぜなら、そういった働き方改革は、表面的なものに過ぎないと感じているからです。
それ以上に、日本の将来を背負っていく若者を奮い立たせ、自立と自律を促す。
そして、仕事の中で夢中になれるもの、達成感や成長、自己を満たせるもの、感動すら与えるもの、それらを提供していくことが、私たちの役目ではないでしょうか?
もし、若者たちが仕事に対して夢中になれる環境を提供できれば「仕事って楽しいですね。休むのももったいないくらいです」って、どんどん成長してくれると私は信じています。
簡単ではありませんけれどね。
定量的なもの(賃金や休み)を改善して提供することも大切ですが、それ以上に、心の底から「魂が喜ぶような」、定性的な環境を提供すること。それこそが、私が考える働き方改革だと感じています。
是非、他社では得ることができないコンセプトを考えてみてください。
ご質問・ご感想を受け付けています。
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