「やってしまいましたわ。」
年明け早々、私が人事担当をしている会社の従業員からそんな言葉が発せられました。
というのもその会社自体、1月4日から仕事が始まっていたわけなのですが、入社1年目の若手従業員が1人「出勤してこない」と言うのです。
これには、私の嫌な予感が的中してしまいました。
なぜなら昨年末から仕事が急に慌ただしくなりだし、入社1年目の若手新入社員たちに大きな負担がかかっていたからです。
危険を感じた私は従業員にその状況を聞いたところ「大丈夫!」という返事。
確かにその若手社員、とても見込がある言われ、周りからも可愛がられていた若者です。しかし結果的にこうなってしまった。
それは、ひと言で言えば「油断していた」ということですが、
今回の現状を踏まえ、いくら素質のある人材を採用したとしても「若者が会社を去って行ってしまう3つの要因」を今回お伝えしたいと思います。
1、ルールを破らない
若手新入社員にはなるべく「残業をさせない」「夜勤をさせない」「休日出勤をさせない」という取り決めをしていました。
それは、過去の苦い経験や、「働き方改革」や「現代の若者の価値観」など時代の流れを考えると、若者にとっては負担が重いからです。ましては学校を出たばかりの新卒社員となるとかなり負担がかかります。
しかし、昨年の11月下旬から工期が遅れているということで残業をし出しました。
最初は1、2時間程度だったのですが、12月に入ると、年末までに仕上げなければならない現場が出てきため、残業で会社に戻ってくるのが夜の10時とかになりました。
そして次の朝の集合時間は朝の6時。特に会社に来なくなった彼は通勤に1時間以上かけていたので、かなり体や精神的に負担がかかっていました。
また後から聞いたのですが、マネジメントをしている所属部長が出張している間に、「俺らが忙しく働いてるのに、なんでオマエら休めるんや!?」そういう考えを持った社員が、新入社員に夜勤や休日出勤を強制していたというのです。
この過ちをやり、何人もの若者が会社から去っていった苦い過去があるのにも関わらず…です。
なので、そういう強制は止めよう!と周知していたはずなのですが、現場で「背に腹は代えられぬ状況」になるとついルールを破ってしまいます。
もちろん現場サイドの言い分もあるでしょうが、このルールを破ってしまったことが、まずは大きな要因ではないかと思います。
2、苦痛「<」楽しさ or やりがい
いっぱしの職人になってくると、この仕事の忙しさ、慌ただしさにエクスタシーを感じてしまう「変わり者??」が出てきます。
「オレが若い時はこんな甘くなかったぞ!」とか、「いかに休まず仕事をし続けるか」、そして「休まず仕事を続けるそんなオレって、カッコいい」なんて自分に酔ってしまうことがあります。
それはそれで本人にとっては気持ちのいいものかもしれません。仕事の充実感、誇り、達成感などが味わえるでしょう。
しかし仕事のやりがいとか、誇り、つまり仕事の楽しさを未だ知らない人からすれば、それはただの苦痛でしかなくなります。
そういった自分よがりの考え方、その価値観を押し付ける行為は相手を苦しめる結果になりかねません。
そういった仕事に対する楽しさとか、充実感、達成感、誇りなどをどうすれば若者に持ってもらうことができるか?そしてベテランと新人の意識の格差をどう埋めていくかが焦点となります。
3、戦力ではなく投資である
新入社員が仕事に慣れだし仕事が忙しくなってくると、新入社員も現場にどんどん駆り出され、わからない、慣れない仕事をどんどんやらされるようになっていました。
そして仕事が思うようにできず、先輩からは「なんでそんなこともできないんだ!?」と責められ、現場と新入社員のモチベーションはさらに悪循環に陥りました。
そこで重要なのは、新入社員は頭数に入れない、入社1~2年は、あくまで「勉強の場だ」と捉える必要があるのではないかと思います。
実はコレ、頭ではわかっていても、実際現場が慌ただしくなるとソレを忘れてしまうんですね。また「仕事が慣れてきた=戦力」と早合点してしまうのも難点です。
「現場に慣れさせろ、見て覚えろ」というスタンスは遠い昔の話しです。
なぜなら現場に放り出すと何もできず、すぐに辞めてしまう若者が多いからです。現に放置プレイをしている会社は若者が定着していません。
そんな中、「新入社員に対しては、現場に出さず最低2年間はじっくりと育成していく」というスタンスを持つ会社も出てきました。
もし、若手人材を育成する環境にない(スキルやお金、時間的なコスト含め)とか、現場の戦力として若手人材を採用する気でいるのなら、若手人材を採用するのはやめておかれた方がいい…。そこまで来ていると私は感じています。
戦力化できていない人材を1軍に上げ、いきなり試合に出させてもまともにプレイできるわけがありません。あくまで若手の新入社員は「育成枠」。戦力化させるための投資期間が必要です。
もちろん、厳しい環境に置くことで成長する場合もありますが、それにも限度があります。
先ほど言いましたが、仕事に対する楽しさとか、やりがい、誇りが持てるようになるまでは厳しい環境下に置くことは「拷問」と捉われてしまうことになりかねません。
「育てる」という言葉はかなり範囲が広く、人によって捉え方が異なるので「育てるとはどういうことか?」「どうすれば成長していくか?」をよくよく協議していく必要があると私は感じています。
今回、「今年こそはゼッタイに新入社員離脱者を出さない!」そう決めていたのにもかかわらず、離脱者が出ようとしています。
まだ決まったわけではありませんが、一度こうなると経験上リカバリーするのがとても難しいです(リカバリーするためには社内の協力が必要です)。
私自身、今年の新入社員はかなり力を入れて確保してきました。
そのおかげで、「今年の新人は頑張っている!」「教えても飲み込みが早く教えがいがある!」「過去に類をみないほど優秀な人材を確保できた!」と社内から声が上がるほどだったのです。
しかし、真面目に頑張っているからこそ、社内が油断してしまったわけです。
「見込がある!」「頑張っている!」と言ってもまだまだ1年も満たない未経験者です。ちょっと慣れてきたからと言って、仕事が忙しいからと言って、ルールを破ってコキ使うのはやめなければなりません。
何でもそうですが、ルールを破るとロクなことが起きません。
まだ辞めるとは決まっていないので、彼が無事戻ってくるよう努力を尽くしたいと思います。