そのやり方、大丈夫ですか?
前回のブログでも言いましたが、先日、とある人材採用力アップセミナーに参加してきました。
そのセミナーは主に中堅企業や大企業向けのものでしたが、その講師が「中小零細企業向けのアドバイス」として、こんなことを言っていました。
- 「小さな会社でも人材をジャンジャン確保できる方法がある」
- 「それは働き方改革を今すぐ実施し、やっていることを全面的にアピールするのだ」
- 「なぜなら小さな会社は働き方改革なんてほとんどやっていないから。」
- 「やったもん勝ちだ!」
- 「私がコンサルティングしている会社は働き方改革をやって、ジャンジャン若手人材を確保している」
- 「だからあなたの会社も今すぐ働き方改革に取り組むべきだ!」
そう言っていたのです。
私はこの発言に対して、非常に危機感というか危険だと感じました。
なぜなら、働き方改革を取り入れたところで「人材が足らない」「人が定着しない」「労働生産性が向上しない」という根本的な解決策には繋がらないからです。
しかも、働き方改革認定制度みたいなものが各自治体にはありますが、目的と手段を履き違えてしまっている企業さんも少なくありません。
認定をもらえれば人材が確保できる!という安易な考えや、助成金をもらうためだけの手段になってしまっている感じさえします。
ですから、もしあなたが「働き方改革」をおこなって人材を確保しよう、人材の定着率や労働生産性を向上させようとしているのなら、ささやかではございますが、私からあなたにイエローカードをプレゼントしたいと思います。
そもそも働き方改革って何?
「働き方改革」と言っても、その概念はハッキリしているようで曖昧です。「働き方改革」の内容を深く理解していない経営者も少なからずおられます。(実は私もその1人ですが(笑)。)
たとえばよくあるものが「長時間労働対策」ですよね。ワークライフバランスが大切。残業を減らし、休暇を充実させる。2020年には有給休暇の強制取得が義務化されます。
私が関わっている建設業においても、大手ゼネコンさんの建築現場なんかは、率先して週休二日制を導入したりしています。
実際、そのセミナー講師も「残業をさせてはいけない!完全週休2日制以上にしないと、人材確保の土俵にさえ乗れない」と言っていました。
もう1つが労働生産性の向上でしょうか。これも労働時間を制御させ、充分な休暇を取得し、心身を健康にしていいくワークライフバランスを保つことが労働生産性の向上に繋がると考えている方が多いようです。
補助金の内容なんか見ていますと、ワークライフバランスだけでなく、ルンバを導入するだけで労働生産性の向上が期待できるということで申請が通ってしまうケースもあるようです(私はこの専門家ではないので、詳しくは他の方に委ねます。)
他にも、正規雇用と非正規雇用の格差を無くす「同一労働同一賃金」、高齢者の就労促進などがありますが、働き方改革待ったなしの時代がやってきていることは誰でもわかります。
本末転倒の働き方改革とは
しかし私がココで申し上げたいのは「働き方改革って、それでいいのでしょうか?」ってことなんですよ。
先日、耳を疑うような、まるでマンガのような、こんな出来事がありました。
それはお昼ごはんを買いに京都市内のとあるコンビニで入った時のことです。
時計の針は12時を回り、店内はお客さんで溢れている。京都市内ですからね、観光客やらビジネスマンたちで店内はいっぱいでした。
私もパンと飲み物を手に取ってレジに並ぼうととした時、ものすごい行列になっていることに気づきました。
「なんでやろ!?これは次の約束まで間に合わないかもやぞ!」そうソワソワしながらレジの方を見ると…
オーナーと思われるヒゲをたくわえたオッチャン1人だけが、せっせとレジをこなしていたのです。
あれ?店員さん1人だけ!?ひょっとして人手不足!?
そう思いながら、ふとバックヤードの入り口に目をやると…
明らかに若そうなコンビニの店員が、お弁当を持ってバックヤードに入っていくのが見えたのです。しかも自分には「かんけーねー」みたいな態度で!です。
それを見ていたのは私だけではありません。他にもそれを見ていた、お昼時間を有意義に過ごしたいであろうサラリーマンの1人がついに怒り出したのです。
「他に店員おらんのか?!」「時間無いし、もう1つレジ開けてくれや!!」と。
そしたら、そのコンビニのオーナーさん、何て返答したでしょうか…?
「すみません!すみません!」「お昼休憩とらせているんです!そうしないとアルバイトに辞められるでんすよぉ…」「働き方改革です。ハハハ…」
私は、このコンビニのレジでひたすら待つことをやめ、お昼ご飯を諦めたのでした…。
そもそも仕事の本質って何でしょうか?
今回の事例は極端だったかもしれません。しかし、あなたの会社でも「間違った働き方改革」をすれば、同じようなことが起こりかねないと申し上げたいのです。
そもそも仕事の本質って何でしょうか?
時間が来たら出社して働く、お昼が来たら休憩をする、提示が来たら退社する、土日はしっかりと休む。そういうことでしょうか?
たとえ、お客さんが困った状況になっていたとしても…?
お客さんが今すぐなんとかしてほしい!という切羽詰まった状況でも、「休憩中だから」と言って、ゆっくりランチをしてスマホを見て、休憩時間が終わってからお客さんの対応をするのでしょうか?
たとえば、もし人命に関わってくるような仕事に就いているのなら?自分の都合ばかり優先する人の存在意義ってあるでしょうか?
今回のコンビニの事例でも同じです。間違った働き方改革を推進して、お客さんを満足させるどころか不快にさせるようでは、お客さんの数も減っていきますしすぐに倒産へと追い込まれるでしょう。
私は何が言いたいのかと言いますと、働き方改革を取り組むのはけっこうですが、「休みや有休がちゃんと取得できます。」「残業はありません。」そういったアプローチから人材を確保しようとすると自滅しますよ!ってことが言いたいのです。
なぜなら、急な仕事が入った時、書き入れ時に、休日出勤や残業をお願いすれば「話しが違う!」と、すぐにあなたの会社をブラック企業だとタグ付けされてしまい兼ねないからです。(厳密に言えば、そういう被害者意識の強い人間を引き寄せてしまうのです。)
そもそも働くとは「傍(はた)を楽(ラク)」にすることです。
お客さんを楽にしてあげる、喜んでもらうことが仕事です。それすらできないのに、表面的な働き方改革をやっても意味があるのか?と。自分の都合を優先させる取り組み方に意味はあるのか?と。
私は常に疑問を持っています。
働き方改革は必ずしも売上に貢献しない
もちろん「働き方改革」をおこない、従業員の満足度を上げることが、お客様の満足度を上げる源泉になるケースもあるでしょう。従業員が不満だらけだったら会社の売上は伸び悩みますからね。
従業員満足度が上がらなけらば顧客満足度は上がらない。
事実、芸人は引退されましたが、今も実業家としてバリバリ活躍されている島田紳助さんもそう言っています。
しかし従業員満足度が間違った方向に進むと顧客満足度は上がりません。先述したコンビニがその典型例でしょう。
先日も、ある飲食店のマネージャーが「従業員の満足度を上げるために働き方改革をおこなっているが、接客態度が未だ悪くてクレームも多い」って嘆いていました。
自分のことばかりを優先させてしまう働き方は、従業員の満足度は上がっても「会社の売り上げ」には必ずしも貢献しない典型例です。
従業員がイキイキして儲かっている会社の共通点
じゃあ、会社の売上につながる「従業員満足度を上げるため」にはどうすればいいのか?
それは、顧客に「ありがとう」と言ってもらうことに「喜び」を感じられる環境づくりをすることではないでしょうか?
人間、誰しも「感謝」されるとモチベーションが上がります。嬉しくなるものです。人に尽くして感謝される。これは人間の生来に備わった機能です。脳内のやる気物質が出ることもわかってきています。
残業を減らし、休日を増やすことで心身をチャージさせることも重要ですが、それだけでは前向きになりません。「感謝される環境をつくる」それこそが本当の働き方改革であり、従業員満足度を上げる中核なのではないかと思います。
ぜひ、あなたも会社の売上を上げ、成長させていくための「本当の働き方改革って何なの?」って見つめ直してみるのもいいかもしれません。