今回は、私のお気に入り書籍である、ベン・パー (Ben Parr) が著した「アテンション:「注目」で人を動かす7つの戦略」について、要約解説してみたいと思います。
注目の3段階と7つの戦略
現代社会は情報過多の時代。その環境下において「注目を得られない商品やサービスはこの世に存在しないのと同じ」と言われています。
- 現代のビジネスにおいて、なぜ「注目」が必要なのか?は、以下を参考にして頂くと理解しやすいでしょう。

そこで、この本では「注目を得るためにはどうすればいいのか?」について、
まずは注目を得るための3段階、
- 即時注目:(点火)
- 短期注目:(藁火)
- 長期注目:(焚火)
そして注目を得る7つの戦略が解説されています。
- 自動トリガー:色やシンボルや音などの感覚的刺激を与えて無意識的な反応を引き起こす。
- フレーミング・トリガー:相手の世界観を覆す。
- 破壊トリガー:人々の期待をあえて裏切る。
- 報酬トリガー:報酬で人々のモチベーションを上げる。
- 評判トリガー:評判を用いて信頼性を高め、相手を魅了する。
- ミステリー・トリガー:謎や不確実性、サスペンスを作り出し、最後まで関心をつなぐ。
- 承認トリガー:共感で結びつきを育てる。
コレを読むだけでも、この本がいかに強力かがおわかりいただけるでしょう。(今すぐこの本読みたい方は、この本が絶版になる前にコチラからどうぞ。※名著は何故か絶版になりやすいです。)
それでは以下に、私の考えを含めて要約解説してみたいと思います(※私なりの解釈と見解ですので、本書籍の内容と異なる場合がございます。予めご了承下さい)。
注目の3段階

1. 即時の注目(点火)
即時の注目は、進化的に「生存のための注意」が起源です。
急な音や派手な色は、危険を知らせる信号として認識されるため、人は無意識に反応します。人間の本能に訴えかける刺激で、一瞬のうちに視線や意識を引き付けます。
事 例
- テレビ広告で、冒頭に突然の音や強烈なビジュアルを挿入。
- 飲料メーカーが、街中の巨大なデジタル広告で動きのある映像を使用。
ビジネスでの応用
- ソーシャルメディア広告:「急な動き」や「非対称デザイン」を使った画像や動画など、冒頭の数秒で視覚的なインパクトを与える。例えば、鮮明なコントラストやユーモアのあるシーン。
- 店舗ディスプレイ:赤や黄色など注意を引く色を活用して、新商品の目立つ棚を設置。
2. 短期の注目(藁火)
「即時の注目」が刺激反射であるのに対し、短期の注目は「興味」と「関連性」に基づきます。
人は、自分にとって有益だと感じる情報や、予想を裏切る展開に惹きつけられます。視線を引き付けた後、興味を持続させるプロセスです。情報量やストーリーが鍵となるでしょう。
事 例
- ストーリーテリング: 広告動画で「商品を使う前」と「使った後」の変化を描く(例: 美容商品のビフォーアフター)。
- クイズ形式の広告: 「あなたはこの問題に答えられますか?」といった形式で関心を喚起する。
ビジネスでの応用
- プレゼンテーション: 商品の利点を、物語形式で説明。「実際にこんな課題を解決しました」と顧客の実例を紹介する。
- 製品デモ: 実演販売や動画で商品を使うプロセスを紹介することで、観客を引き込みます。
- Eコマースサイト: 動画やインフォグラフィックで商品の使用方法を視覚的に説明。
- イベントマーケティング: 観客を巻き込むインタラクティブな体験を提供し、短時間でもブランド価値を訴求。
3. 長期の注目(焚火)
長期の注目は、「習慣化」と「感情的な結びつき」によって成り立ちます。
パーソナライズされた体験、一貫性、定期的な価値提供など、ブランドや製品が人々の生活に溶け込み、なくてはならない存在になることが目標です。
事 例
- パーソナライズ体験: 一貫性、定期的な価値提供。Spotifyの「あなたへのおすすめ」プレイリストや、Amazonの「これを買った人はこれも買っています」機能など。
- エコシステムの構築: AppleがiPhoneとMac、Apple Watchなどを連携させ、長期的な利用を促進。ハーレーダビッドソンの愛好家
ビジネスでの応用
- サブスクリプションモデル: 顧客ロイヤリティを高める特典やパーソナライズしたり、月額制サービスで、継続利用を誘導。
- ブランドコミュニティ: 一貫したメッセージを伝え続けることで、顧客に「共感」や「愛着」を持たせたり、ファンイベントやオンラインフォーラムを通じて、顧客同士のつながりを作り、ブランドへの忠誠心を育てる。
7つの注目戦略

1.自動トリガー
自動トリガーは、無意識に引き起こされる人間の反応を活用するものです。五感(視覚、聴覚、嗅覚、触覚、味覚)に訴える刺激が即座に注意を引きつけます。
事 例
- 視覚的刺激: 「赤」や「黄色」など緊急性を連想させる色を使用したセール広告。
- 音の刺激: iPhoneの通知音のように条件反射的に注意を引くサウンド。
- 匂いの刺激: 焼きたてのパンの香りを店頭に漂わせて、顧客を誘引。
ビジネス応用
- 広告デザイン
- コントラストの強い色や動きのある映像を使うことで、目を引きやすくなります。
- 商品ポスターに視線誘導デザインを組み込む。
- 店舗マーケティング
- 新製品エリアにライトアップや目立つPOPを設置。
- 香りマーケティングを活用して店舗に良い印象を与える。
- デジタルマーケティング
- SNS広告で初めの2秒に視覚的インパクトを持たせるクリエイティブを使用。
2.フレーミング・トリガー
フレーミングトリガーは、情報の提示方法(フレーム)を変えることで、人々の先入観・固定観念・認識や判断を変える手法です。
事 例
- ポジティブフレーム: 「この薬は95%の人に効果があります」といった成功率を強調する表現。
- 緊急性の強調: 「残り3点!今すぐ購入を!」と数量限定やタイムセールを訴求。
- 相対的な価値強調: 「他社製品の2倍長持ちします」。
ビジネス応用
- 価格表示
- 「1日たった50円」で利用できると分割で提示。
- 製品説明
- 製品の利点を他社との比較で強調し、優位性をアピール。
- プロモーション
- 緊急性や限定性をアピールすることで購買意欲を促進。
3.破壊トリガー
破壊トリガーは、予想外の要素や斬新なアイデアを使って注意を引きつける方法です。
事 例
- プロダクトイノベーション: テスラのCybertruckの奇抜なデザインが市場の注目を集めた。
- 広告キャンペーン: Old Spiceの「奇抜な男性用デオドラント広告」でのユーモラスな展開。
- 予想外の変化: Appleがイヤホンジャックを廃止し、注目と議論を生んだ。
ビジネス応用
- ユニークなデザイン
- 製品の見た目や機能に意外性を取り入れる。
- 広告での意外性
- 常識に逆らうメッセージやユーモアを活用。
- 新しい市場創出
- 従来の市場で提供されていなかった価値を提案。
4.報酬トリガー
報酬トリガーは、人々が何かを達成したり体験した際に得られる「満足感」や「報酬」を基に行動を促進するものです。報酬には心理的報酬・物質的報酬があります。
事 例
- ロイヤリティプログラム: 飲食チェーンが「スタンプ10個で1杯無料」のような特典を提供。
- ゲーム要素: アプリで「バッジ」や「ランキング」を付与。
- ギャンブル的要素: ガチャやスロット形式の報酬システム。
ビジネス応用
- インセンティブ提供
- 新規顧客に特別クーポンを配布。
- ゲーミフィケーション
- アプリやサービスに進捗や達成感を感じさせる要素を追加。
- サブスクリプションモデル
- 定期購読者に追加の特典を提供。
5.評判トリガー
評判トリガーは、信頼性や権威のある第三者の推薦やレビューを活用して注目を集める手法です。
事 例
- インフルエンサー: 有名人や業界の専門家による商品の推薦。
- レビューサイト: 高評価のレビューを強調する。
- 認証マーク: 安全性や品質を保証するマーク(例: オーガニック認証)。
ビジネス応用
- 口コミマーケティング
- 顧客レビューを積極的に共有。
- インフルエンサーマーケティング
- 影響力のある人々に製品を試してもらい、その体験をシェアしてもらう。
- 権威付け
- 受賞歴や認証を広告に活用。
6.ミステリー・トリガー
ミステリートリガーは、疑問や未解決の情報を利用して、人々の好奇心を引き出す方法です。
事 例
- ティーザー広告: 「次週、何が起こるか見逃せない!」といった予告形式。
- 謎のパッケージ: 中身が明かされていない状態で販売(例: ミステリーボックス)。
- キャンペーン: 「あなたの予想を投稿してください!」と参加型イベントを促す。
ビジネス応用
- 商品発表イベント
- 発表まで詳細を伏せて期待感を高める。
- ストーリーマーケティング
- シリーズ化した広告で、次の展開を予測させる。
- 限定商品販売
- 何が入っているかわからないパッケージで販売。
7.承認トリガー
承認トリガーは、人々が評価されたり認識されたりすることで満足感を得る要素を利用するものです。
事 例
- SNSでのフィーチャー: 顧客が投稿した写真を公式アカウントで紹介。
- コミュニティ内の表彰: 優秀な顧客やメンバーに特別な称号や賞を授与。
- レビューへの返信: 企業が顧客のフィードバックに感謝を示す。
ビジネス応用
- カスタマーエンゲージメント
- 顧客の投稿やレビューを共有して「感謝」を示す。
- ポイントシステム
- 顧客が行動するたびにポイントやバッジを付与。
- 従業員エンゲージメント
- 社内での表彰や感謝状の授与を行う。
まとめ

消費者の行動プロセスを絡めると強力
7つの戦略を駆使しながら注目の3ステップへと進めていくこと。
そして「知る→興味・関心を持つ→欲しくなる→購買する→リピートする→ファンになる」etc..、消費者の行動・購買の各プロセスに、7つのトリガーを当てはめていく。これがポイントです。
人間関係に全てに「注目」はマスト
注目を得るだけでなく、注目を得続け、顧客を離さないこと。これは顧客だけでなく、社内の従業員や恋人にも当てはまりますね。
これらを活用する際、ターゲットオーディエンスに合わせた適切なトリガーの選択が成功の鍵です。ビジネス目標に応じて、これらのトリガーを組み合わせた戦略を作ることで、より強力な結果を得ることができるでしょう。
この理論を実際のビジネスに応用する際は、自社のターゲットオーディエンスの行動や心理を深く理解することが重要であることは言うまでもありません。
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