ビジネスの世界では、時として「常識」とされることが成功の足かせになることがあります。
そんなときに役立つのが「錯視（さくし）」の考え方です。
こんにちは、藤村です。
錯視とは、目の錯覚によって実際とは異なるものを知覚する現象です。
錯視は単に視覚の問題にとどまらず、人間の思考やビジネス戦略にも深く関係しています。
今回は、「錯視」をビジネスの視点で捉え、どのように活用できるのかを探ります。
錯視とは何か？
錯視とは、視覚が現実とは異なる解釈をしてしまう現象のことです。
たとえば、「ネッカーの立方体」は、一つの図形なのに奥行きの解釈が変わるため、見え方が入れ替わります。また、「エビングハウス錯視」では、同じ大きさの円でも周囲の配置によって大きく見えたり小さく見えたりします。
これらの錯視が起こるのは、人間の脳が環境を一定のルールで解釈する習性を持っているからです。しかし、これは裏を返せば、固定観念に縛られているとも言えます。
錯視が示すビジネスのヒント
錯視のメカニズムを理解すると、ビジネスにおいても視点を変えることの重要性が見えてきます。
以下の3つのポイントに注目してみましょう。
「常識の枠」にとらわれない発想（ネッカーの立方体）
ネッカーの立方体は、どちらの面が手前にあるかが入れ替わる錯視です。これは、「同じものでも、視点を変えるとまったく違う見え方をする」ということを示しています。
ビジネスの世界では、一つのアイデアが「良いか悪いか」ではなく、「どう見せるか」によって評価が変わることがよくあります。
たとえば、ある製品が高価すぎると言われた場合、「高額な投資」と捉えるのではなく、「長期間のコスト削減につながる」と訴求することで、顧客の見方を変えられるかもしれません。
事例：スターバックスの価格戦略
スターバックスは、単なる「コーヒーショップ」ではなく、「高級なカフェ体験」を提供することで、競合よりも高価格でも顧客を惹きつけることに成功しました。価格が高いという事実は変わらないものの、「コーヒー」ではなく「ライフスタイルの提供」という視点に変えることで、顧客の受け止め方が変わったのです。
人間の「錯覚」を利用したマーケティング（エビングハウス錯視）
エビングハウス錯視では、同じ大きさの円が、周りの要素によって大きく見えたり小さく見えたりします。これは、比較対象によって価値の見え方が変わるということを意味します。
ビジネスでは、「見せ方」次第でお得感や価値の高さを演出することができるのです。
事例：高価格の商品をうまく活用する
多くのレストランでは、「松・竹・梅」など3つの価格帯のメニューを用意します。これは、最も高価なメニュー（松）があることで、中間の「竹」が適度にお得に感じられるようにする戦略です。実際、多くの人が真ん中の価格帯を選ぶ傾向にあります。
直感に頼らず、データを活用する（ミュラー・リヤー錯視）
ミュラー・リヤー錯視では、同じ長さの線でも、矢印の向きによって長さが違って見えます。この錯視は、「直感が必ずしも正しいとは限らない」ことを示しています。
ビジネスの世界でも、直感だけで意思決定を行うと、錯視に惑わされて誤った判断をしてしまうことがあります。そのため、データや実験による検証が重要になります。
事例：NetflixのA/Bテスト
Netflixは、どの作品をオススメするかを決める際、直感ではなく膨大なデータを分析し、視聴者の行動をもとに最適なサムネイルを選択します。これにより、視聴者が興味を持ちやすいデザインを科学的に決定しているのです。
結論：視点を変えれば、新しいチャンスが生まれる
錯視は、単なる「目の錯覚」ではなく、「人間の思考のクセ」を示すものでもあります。そして、この思考のクセを理解し、活用することで、ビジネスの発想や戦略を変え、新しいチャンスを生み出すことができるのです。
- 視点を変えれば、価値の見え方も変わる（ネッカーの立方体）
- 比較対象を工夫することで、印象を操作できる（エビングハウス錯視）
- 直感に頼らず、データを重視することで誤解を防げる（ミュラー・リヤー錯視）
ビジネスの成功のカギは、「錯視」のように一つのものを別の視点で見る力にあるのかもしれません。あなたのビジネスでも、思い込みを疑い、新しい見方を取り入れてみてはいかがでしょうか？
