不動産を売却するなら「少しでも高く売却したい!」
そう思うのは当然のことです。
ですから、
- どんな不動産会社が良いのか?
- 不動産売却一括査定を利用すべきか?
- 大手の不動産会社がいいのか?地元の不動産会社がいいのか?
- 集客力は?売却力は?得意分野は?実績は?
- そもそもいくらで売ってくれるの?
いろいろ、悩みは尽きませんよね。

こんにちは、藤村不動産研究所です。
私だって不動産を売却するなら「できるだけ高く売却したい!」と思います。
ですが、ここで実に悲しい現実をあなたにお知らせしなければなりません。
それは「どの不動産会社に売却を依頼しても…大抵は高く売ってくれない」と言うことです。
それはたとえ「他の不動産会社よりも高い査定額を提示されたとしても・・」です。
その理由は実にシンプルで、不動産会社の仕事は「あなたの不動産を高く売ることではないから」です。
なぜでしょうか?
その理由を「不動産業界の構造」や「一般の人には知られたくない業界の裏事情」から解説していきます。
- 営業マンがあなたの不動産を高く売りたくない理由
- 高く売るより⚫︎⚫︎で売れ!
- なぜ、不動産会社はアナタの味方になれないのか?
- 不動産業界の悪しき体質
- 営業マンの本音と建前
- 不動産会社の餌食にされない方法
成功報酬型=成約しないとゼロ
不動産の売買(賃貸)仲介した際に得られる不動産会社の報酬(仲介手数料)。
これは売買取引を成立しないと1円も儲からない仕組みになっています。


つまり「仲介業は成功報酬で成り立っている」ビジネスです。
また、取引を成立した際にもらえる報酬額は法律で上限を定められています。
経営コンサルタントのように「高く売ったからもっと報酬を弾んでください」とは言えません。
- 取引を成立させないと報酬がもらえない
- 報酬額には上限が定められている
ですから1日でも早く、1件でも多く早く成約させなければ、不動産会社は商売になりません。
それは、株を頻繁に売り買いさせて手数料収益を得る証券会社と同じ構造で、頻繁に売り買いを成立させなければ、ビジネスになりません。
目的は”早くたくさん”取引すること


1日でも早く1件でも多く
1日でも早く1件でも多く成約させるためには、売れやすい価格で売ることが重要になってきます。
また、報酬額の上限が決まっているため、できるだけ経費をかけないこともポイントです。
- 取引を成立させないと報酬がもらえない → 売れやすい価格で売ること!
- 報酬額には上限がある → なるべく経費をかけないこと!
高く売るほど割に合わない
そこで、あなたの不動産を高く売ろうとすればどうなるでしょうか?
- まず販売期間が長引きます。
- そして広告費や人件費などの経費がかかります。
つまり、高く売ろうとすればするほど、割に合わない仕事になってきます。
ですから不動産会社の本音は・・
- あなたの不動産を高く売りたくない!
- 高く売ることが我々の仕事ではない!
そう思っているのです。
それよりも「1日でも早く1件でも多く、そして最大限儲けるために何をすべきか?」
これが不動産会社の至上命題になっており、ひと様の不動産を利用して儲ける手口が”当然のように”横行しているのです。
つまり、売主の立場になるのではなく、売主を利用した儲けのネタになってしまっている。
これが不動産業界の実情です。
3,000万円と2,800万円で売った場合の比較
その証拠として、ここで「3,000万円」と「2,800万円」で不動産を売却した場合の比較を検証してみます。


片手仲介の場合(売主側のみ仲介)
売却価格 | 仲介手数料(税別) | 売主の収入差 | 不動産会社収入差 |
---|---|---|---|
3,000万円 | 96万円 | +200万円 | +6万円 |
2,800万円 | 90万円 | ▲200万円 | ▲6万円 |
売主にとっては200万円の差ですが、不動産会社にとっては6万円の差にしかなりません。
この「6万円」をどう捉えるか?がポイントです。
「6万円UPのために頑張らない」現場
例えば、あなたが営業マンだったとして、こういう状況に置かれたらどう思うでしょうか?
「あと6万円報酬を増やすために、3,000万円で売る努力をしよう!」…
もしあなたが、そう思ったのなら誠実な営業マンです。
しかし不動産業界の現実は・・?そうならないのが現実です。
なぜなら、
- 3,000万円で売ろうとすれば販売期間が長引くリスクが高い
- 広告費や営業活動に追加で経費がかかる
- それでも買手がつかないリスクがある(無報酬・赤字リスク)
このようなリスクが発生するからです。
結果「だったら早く2,800万円で売って確実に報酬を確保したほうがいい」という心理になるのです。
「月20万円の販売経費」がかかるケースでの計算例
仮に「毎月20万円の販売経費(広告費・営業活動費・人件費など)」がかかるとします。
- 2,800万円で、3ヶ月で売れる → 経費60万円+報酬90万円 →【粗利 30万円】
- 3,000万円で、6ヶ月かかる → 経費120万円+報酬96万円 → 【粗利 ▲24万円】(赤字)
3,000万円で売れば大赤字。
では、販売経費を2倍の月40万円にし、3,000万円で3ヶ月で売れる努力をしたとしましょう。
- 3,000万円を、3ヶ月売る → 経費120万円+報酬96万円 → 【粗利 ▲24万円】(赤字)
結局は赤字です。
不動産営業マンとしては、間違いなく「2,800万円で早く売ろう」と考えますよね。
「売れないかも」という最大リスク
さらに、3,000万円で強気に出た結果、売れずに「媒介契約期間」が終了してしまう。そんな可能性もあります。
すると、どんな結果が待ち受けているでしょうか?
- 一円も入らない
- 広告費・営業経費だけ赤字
- 上司から詰められる、成績が落ちる
- 「契約が取れない奴」として晒され・クビ宣告
これは営業マンにとっては、これが最大の恐怖です。
ですので、 「6万円のために頑張る」より「赤字にならず、確実に報酬を確保する」ことが優先されます。
つまり 「早く売りたい=値下げしてでも成約させたい」となるのです。
両手仲介でもスタンスは同じ
ちなみに「両手仲介(売主・買主双方から手数料)」の場合は12万円の差になります。
売却価格 | 仲介手数料(税別) | 売主の利益 | 不動産会社の利益 |
---|---|---|---|
3,000万円 | 96万円+96万円=192万円 | 3,000万円 | 192万円 |
2,800万円 | 90万円+90万円=180万円 | 2,800万円 | 180万円 |
それでも「経費」「リスク」との天秤で考えると、やはり「早く売るほうが得」という思考は変わりません。
現場営業マンの心理を一言で表すなら「高く売るよりも”確実に売るほうが”ラクで安全」これに尽きるわけです。
「200万円高く売れるなら頑張ろう!」という感覚は、残念ながら売主側の考え方。
不動産営業マンにとっては「6万円のためにリスクを負いたくない」という温度感になってしまうのです。
こうした現実を知っていると「なぜこんなに値下げを勧めるんだろう?」という疑問も腑に落ちてくるのではないでしょうか。
自分の利益を優先せざるを得ない業界構造
不動産営業マンが「売主の利益」ではなく「自分の利益を優先」させる理由。それは、そうせざるを得ない業界の構造に問題があります。
そこでなぜ、不動産営業マンは「あなたの味方になれないのか?」その要因を探ってみます。
ノルマがキツい


どの営業マンでもそうですが、特に不動産営業マンのノルマは厳しめです。
特に広告費や人件費、固定費が高めの大企業などは、さらに大きな額のノルマを設定されているでしょう。
たとえば「不動産営業マンの月給が50万円で、毎月250万円のノルマ」が設定されているとします。
- 毎月250万円の手数料収入を得るためには・・
- 3,000万円の売買取引を約3件、毎月こなさなければなりません。
- その3件の取引を成立させるためには・・
- 一般的に、常に最低20〜30件の案件を抱えておく必要があります。
そのすべての案件に目を配りつつ、優先順位をつけながら回していく必要が出てきます。すると、自然と「効率的に稼ぐ」思考になってしまいます。
「歩合給」という給与体系


不動産営業マンは、一般的に「成果報酬型」の給与体系が主流です。
固定給は低めに抑えられ、成約ごとの歩合給や、業績給で稼ぐスタイルが多いです。
成約しなければ会社から問い詰められ、固定給だけでは生活できず、むしろ会社から「給与ドロボー」としてレッテルを貼られます。
結局、「営業マンの成績=自分の給与・将来」と直結しているため、どうしても
- 「どうやってこの案件を早くまとめるか?」
- 「どうやって両手取引に持ち込むか?」
- 「どうやって高額な物件を扱うか?」
…と、“自分都合”の思考になってしまいやすい構造です。
営業マンも生活がかかっていますし、成果主義でやっている以上、「利益を優先するのは当然」と考える人も少なくありません。
ですからお客様のことよりも「契約!契約!契約!」になりがちなのです。
売上至上主義


そして不動産会社自体も「売上至上主義」が大半です。
営業会社的な社風が強く「顧客満足」や「誠実な対応」よりも、
- 「今月の数字はどうだ?」
- 「いつ契約を取るんだ!?」
- 「今期、いくら売上をつくれるか?」
このようプレッシャーが常にかけられます。
「君はいくら稼いできたか?」この一言で評価が決まり、人事考課、昇進、待遇が左右されます。
たとえば、月に仲介手数料300万円を稼いできた営業マンと、100万円の営業マンとでは、社内での扱いや周囲の見る目もまるで違います。
- 「あいつはデキる営業」「エース営業マン」と崇められるか?
- もしくは「ノルマ未達」「使えないやつ」とレッテルを貼られるか?
もちろん「お客様第一」「お客様の笑顔をお届け」と掲げている企業もありますが、それはあくまで上部だけ。
実際は「きれいごとじゃ飯は食えない」と感じています。
営業マンの質が低い問題


業界構造だけでなく、「人(営業マン)の質」も、切り離せない大きな問題点です。
一般的に、不動産業界は「稼げる」「歩合で一発逆転」というイメージが強い傾向にあります。
特に営業職は「高収入」「成り上がり」「学歴不問でも成功できる」といった広告文句で求人募集をしている会社も少なくありません。
現に、不動産営業マンになろうとする人の中には、
- 「ガンガン稼いで派手に暮らしたい」
- 「学歴も資格もないけど、とにかく金が欲しい」
- 「営業で数字さえ出せば何とかなる」
といった、いわば「銭ゲバ志向」の人も少なくありません。
もちろん、「お客様の役に立ちたい」「不動産を通じて人生に寄り添いたい」という志を持つ方もいますが、ごく少数。やはり「稼げるから」という理由で入ってくる人が多いのも否定できません。
そのような人が「売主様の利益を優先する・・」とは言い難いでしょう。
「質の低い営業マンでも稼げる仕組み」が業界に存在し「質の高い営業マンが報われにくい」環境になっているのです。
大手不動産営業マンは安心か?


大手には高学歴層も多く在籍しています。
その学歴を活かすべく大手不動産会社に希望を持って就職する人も少なくありません。
ですが現状は、大手不動産会社でも、根本的には「利益優先の構造」からは逃れられないのが現実です。
- 「今日アポ何件取った?」
- 「今月あといくつ契約取れる?」
- 「他社に取られる前に、とにかく専任媒介もらってこい!」
- 「足で稼げ」「電話しろ」「数字持ってこい!」
このようなプレッシャーは、地元の中小不動産会社より厳しいです。
- こんなの、自分がやりたかった仕事じゃない…
- でも、辞めるわけにはいかない。
- 何より「無能」と思われたくない。
- 「同僚に負けたくない、見下されたくない」
- 結果が出なければ、社内での評価も、同期との比較も、どんどん差が開いていく。
このような心理的圧力と自分のプライドを守るために、“悪魔に魂を売る”営業マンが生まれてしまうのも事実です。


- 売主に無理やり値下げさせて早期契約
- 他社に取られるくらいなら囲い込んででも自分で売り切る
- 買取業者に安く売らせて両手仲介でまとめるetc..
このようなやり方で、大手という信頼を悪用し、売主の利益を毀損させる。
またこれらによって“数字を上げる営業マン”は社内で評価され、昇進していく。これが実情でしょう。
これは大手不動産会社だけではありませんが、不動産業界としての構造が、営業会社としての宿命が”そうさせてしまう”のです。
誠実な営業マンほど食っていけない世界


もちろん、悪魔に魂を売る営業マンだけではありません。
その一方で、
- 「誠実に、お客様にとって本当にベストな提案をしたい」
- 「高く売りたいという売主の想いに応えたい」
と葛藤しながら頑張っている営業マンもいます。しかし、そういう営業マンほど苦労するのが現実です。
なぜなら、時間をかけて誠実に対応すればするほど、効率が悪くなり、数字もついてこないからです。
- 「売主に尽くしたい」と思っても「効率よく稼がないと食っていけない」
この現実が、現場の営業マンを追い込んでいます。


本来であれば業界全体として「売主にしっかり寄り添って、最高値で売る営業マン」が報われる仕組みに変えていかなければなりません。
そうなれば、不動産営業マンも胸を張って「売主第一!」と宣言できるはずです。
しかし現状では「高く売る営業マン」より「早く売る営業マン」が得をする。
これが、不動産営業マンたちを“やりがい”ではなく“数字”に駆り立てる構造になっているのだと思います。
結果、「理想と現実」のギャップに悩んで辞めていく人も多い。
これはまさに「スポーツのプロの世界」にも似ています。
- 華やかな一面の裏には、熾烈な競争と、結果を出せない者に対する厳しい現実がある。
- 数字を出せば拍手喝采、出せなければ即戦力外。
マジメで誠実な不動産営業マンほど、この業界では生き残っていけない。そんな「シビアな勝負の世界」なのです。
不動産営業マンが効率よく稼ぐためにしていること


このような業界構造の背景があるため、以下のような手法で「効率よく稼ぐ」ことをおこなっています。
① 両手仲介で手数料を2倍にする
- 3,000万円の物件の片手仲介なら手数料額は96万円です。
- 両手仲介なら3,000万円×3%+6万円×2=192万円になります。
- 同じ1件でも、両手仲介なら片手の倍になります。
- そのため、巧妙に仕組まれた「囲い込み」を駆使して両手仲介を狙います。
② 買取業者に買わせる
- 「買取再販業者」なら現金購入で話が早く、販売活動も短縮できるため、早く楽に決まります。
- また再販時には仲介に入れるため、さらに美味しい案件になります。
- 買取業者と提携していれば継続的な案件にもつながります。
- まさに営業マンにとって安定収入のパイプになるのです。
③ 優良物件に力を集中させる
- すぐに売れそうな人気物件、価格調整に柔軟な売主様、買手がつきやすいエリアを優先させます。
- 一方で「手間の割に厳しそうな案件」は放置して値下げしやすく持っていきます。
他にも手法はありますが、このような“生存戦略”をやらざるを得ない状況なのです。
「売主に寄り添って、じっくり高値で売り切る営業マン」が社内で評価される仕組みがない以上「早く、数をこなし、いかに儲けられるか?」が生き残るのは当然です。
こうして営業マン個人が生き残るための知恵が積み重なり、結果として「売主第一」ではなく「自己利益優先」にならざるを得ない構造が出来上がっているのです。
ここにこそ、不動産業界の「構造的ジレンマ」があります。
そもそも「高く売る」は業務の範囲外
そもそも論ですが、「他人の不動産を高く売る」というのは本来、不動産会社の仕事ではありません。
なぜなら、媒介(仲介)業務の範囲は、以下に定められているからです。
- 物件調査
- 価格査定
- 売買の相手方の探索
- 売買の相手方との交渉
- 売買契約の締結と書面の交付
- 決済、引渡し等
不動産会社が上記の媒介業務を遂行すれば、報酬獲得の権利を得られます。
この中には「高く売る」という業務は含まれていませんよね。「他人の不動産を高く売る」というのは不動産会社の仕事ではないのです。
それは不動産(仲介)会社は、不動産流通業者であり、コンサルティング会社ではないからです。
ですから、ほとんどの不動産営業マンが「不動産を高く売るためのノウハウ」を持っていませんし、研修等でそのノウハウを教えらることもありません。
教えられることは「いかに円滑に、かつ安全に不動産を流通させるか?」であり、「いかに高く売れるか?」ではないのです。
売主と利益相反の不動産業界の構造まとめ


では一旦まとめましょう。
- 不動産会社は成功報酬。
- 報酬に法律で定められた上限額がある。
- 不動産会社は高く売ることが仕事ではない。
- より多く・より早く・確実に取引を成立させることが仕事。
- そもそも高く売る仕事は不動産(仲介)業の業務範囲外。
- ノルマや歩合給、売上至上主義が、売主の味方になれない原因。
- 売主の利益より「早く・確実に・経費を抑えつついかに儲けるか」が最優先。
物件がいくらで売れようが、売主がどうなろうが、成約して手数料さえ貰えたらあとは関係ない。
- 「売主様と共に頑張って高く売ろう」というより、
- 「売主様の物件をどうさばいて儲けるか?」
これが不動産業です。
これは、決して営業マン一人ひとりが悪いわけではありません。業界全体の「構造」がそうさせています。
この構造がある限り、表向きは「高く売ります」と言いつつ、内心では「早く売りたい」「できるだけ儲けたい」と考え行動しているのです。
不動産売却一括査定をしてもムダ


ということは、最近主流になりつつある「不動産売却一括査定」は無意味であることが伺えます。
「不動産会社を比較して高く売れる」という文言は単なる「釣り餌」なのです。
また「適正価格で売れましょう」というアドバイスも危険が潜んでいます。
他にも「売却力」「販売力」をアピールしている不動産会社も実は裏にカラクリがあるのです。
↓↓そのカラクリは別記事で詳しく解説しています。↓↓


このインチキ・・というかイカサマのような不動産業界の体質を知っておかなければ、あなたは不動産営業マンの術中にハマるので注意しましょう。
やりたい放題ヤラレてしまう前に、、必ず目を通しておいてください。↑↑