不動産の売買仲介手数料について、よく「3%プラス6万円の6万円とは?」と質問されることが多い。
そこで不動産売買における仲介手数料の計算と性質について解説する。
仲介手数料の3%プラス6万円とは?
結論から言えば「3%+6万円」とは、宅建業の報酬額の速算式である。
仲介手数料の計算
| 取引金額(売買価格) | 報酬額の計算式 | 報酬額(税抜・上限) |
|---|---|---|
| 200万円以下の部分 | 取引金額 × 5% | 最大 10万円 |
| 200万円超~400万円以下の部分 | 取引金額 × 4% | 最大 8万円 |
| 400万円超の部分 | 取引金額 × 3% | 金額に応じて加算 |
(計算例)売買価格が 2,000万円 の場合
- ①:200万円以下×5%=10万円
- ②:200万円超~400万円以下×4%=8万円
- ③:400万円超~2,000万円以下×3%=48万円
- ①+②+③=66万円(税抜)
計算方法が煩雑なため、一般的に次「3%+6万円の速算法」が使われている。
仲介手数料の速算法
- 売買価格が400万円超の場合、速算法が使われる 。これがいわゆる「売買価格 × 3% + 6万円」。
- 売買価格が 2,000万円 の場合
→ 2,000万円 × 3% + 6万円 = 66万円(税抜) - 売買価格が 3,000万円 の場合
→ 3,000万円 × 3% + 6万円 = 96万円(税抜) - 売買価格が 5,000万円 の場合
→ 5,000万円 × 3% + 6万円 = 156万円(税抜)
- 上記は 「1件あたり片手仲介(片側当事者から受領する場合)」 の上限。
- 両手仲介(売主・買主双方から受領)の場合は、その2倍まで受領可能。
- 消費税は別途加算される。
※令和6年7月1日施行の法改正により、800万円以下の不動産売買における仲介手数料の報酬額は最大30万円(税抜)となっている(低廉な空家等の売買の媒介報酬の特例)。
仲介手数料の性質
「仲介手数料の性質」は、単なる“売買価格に比例する費用”ではなく、法的にも性質がきちんと定められている報酬である。
成功報酬である
- 宅建業法第46条で「報酬は取引が成立したときに限り受け取ることができる」と定められている。
- つまり、契約が成立して初めて請求できるものであり、成立しなければ原則ゼロである。
- 例外として、依頼者が契約目前で一方的に破棄して仲介業者に損害を与えた場合には、実費や違約金を請求できることもある。
法律で上限が決められている
- 宅地建物取引業法施行規則により、「売買価格に応じた定率+調整額」で上限額が厳格に決まっている。
- 業者はこの範囲内で報酬を受け取ることができ、上限を超える請求は原則違法。
- したがって「自由価格のサービス料」ではなく、公的に規制された報酬という性格を持つ。
契約自由の範囲で減額・免除は可能
- 上限はあるものの、下限は規定されていない。
- よって「仲介手数料無料」や「半額キャンペーン」などは合法だが、サービスの質の低下や顧客の不利益に繋がりやすい。
- 不動産会社の経営戦略として調整可能な性質を持っているが、多くは上限額が請求される。
費用ではなく「役務の対価」
- 仲介手数料は「広告費」や「実費の立替」とは別物。
- あくまで仲介業者が提供する 専門的役務(情報提供・交渉・契約サポート等)の対価。
- 依頼者にとっては「安心・安全に取引できる保証料」的な性格がある。
両手仲介で2倍可能
- 依頼者双方(売主・買主)から受領できるため、実務上は両手仲介で不動産会社の利益が大きくなる。
- この性質が、不動産業界の構造(囲い込みや情報操作)に影響しているのも事実。
仲介手数料の主な内訳
仲介手数料の内訳について説明する。以下は一般的な項目である。
主な内訳項目
| 項目 | 具体的な内容 |
|---|---|
| 営業経費(直接費) | 営業担当者の人件費、顧客対応、物件案内、価格交渉などの活動費用。インターネット広告(ポータルサイト)、折込広告やチラシ、現地看板の設置費用。 |
| 営業経費(間接費) | 事務所の賃料、光熱費、通信費、事務員の給与など、会社を維持するための間接的な経費。 |
| 物件調査費(専門業務) | 登記簿謄本や公図などの取得費用、役所での法令上の制限(都市計画法、建築基準法など)の調査費用。 |
| 契約書・重要事項説明書作成費(専門業務) | 宅地建物取引士による法令に基づいた専門的な書類の作成費用。 |
| 契約・決済の立会い費用(専門業務) | 契約締結や、残代金決済・物件引渡し時の立ち合い、金融機関との調整費用 |
| 経常利益(利潤) | 上記のコストを差し引いた後に会社に残る部分。企業の継続・発展のための重要な原資。 |
仲介料の使い道は会社によって違う
仲介手数料に占める各項目の比率は不動産会社によって異なるし、戦略も異なる。
たとえば、売買金額が低い場合はその分仲介手数料も低くなるので経常利益のウエイトは小さくなる。
基本的に専門業務のコストは削れない(削る不動産会社も存在するが…)。よって、売買金額が低い物件は営業経費などを大幅に削減する不動産会社が少なくない。
一方で、営業経費等を削減せず、両手仲介や紹介料などの収益を得て、経常利益を確保する不動産会社も存在する。

仲介業者が単独で売主と買主の間に入り取引を成立させることを「両手仲介」(単独仲介)と呼びます。



一方、売主と買主それぞれに仲介業者が分かれて取引を成立させることを「片手仲介」(分かれ)と呼びます。
仲介手数料は高いか?安いか?
「仲介手数料は高いか?安いか?」
これは、不動産業界でも永遠の議論材料である。
顧客からすれば高いと感じる場合が多いし、不動産会社側からすれば安いと感じる場合が多いだろう。
「高い」と感じられる理由
- 金額が大きい
- 3,000万円の物件で約100万円、5,000万円で約150万円…一度に支払う額としては非常に大きいと感じやすい。
- 成果保証が不十分に見える
- 不動産が「売れるかどうか」「早く売れるか」には運や市場環境も影響すると思われ、成果と報酬が釣り合っていないように感じやすい。
- 購入の場合は、数回のやりとりだけで仲介手数料の満額を請求されるのには納得がいかないと感じる。
- 「一律の料率」に対する不満
- 売買価格が大きいほど手数料も比例して高くなる。
- しかし業務の手間は、2,000万円の物件も5,000万円の物件も大きく変わらない。
- 「手間が変わらないのに報酬は倍以上?」と不公平感を覚える。
- 作業内容が見えにくい
- 調査や交渉、書類作成といった専門的作業は依頼者から見えづらい。
- 結果として「内覧に数回立ち会っただけで100万円?」と誤解されやすい。
- 他サービスとの比較
- 保険や金融商品などの仲介手数料と比べても、不動産は圧倒的に高額。
- 「なぜ不動産だけこんなに?」という比較感情も作用する。
「安い」と言える理由
- 取引リスクを背負っている
- 契約不適合責任や重要事項説明、契約不成立リスクなど、仲介会社は相当な責任とリスクを抱えている。
- 成果報酬である
- 売買が成立しなければ1円も入らない。
- 時間や広告費だけかかって無報酬になることも多い。
- キャッシュフローが悪い
- 初回の接点(査定・相談)から契約成立・決済まで、最短でも3か月、場合によっては1年以上かかる。
- それまでの間は営業活動・広告・内覧対応・交渉・調査をすべて先行投資。
- お金が入るのは最後の最後であり、実質的に「長期間の無給労働」状態が続く。
- 利益率が低い
- 小売業や飲食業では、粗利30%前後ないと経営が回らないのが一般的。
- 製造業でも、人件費や設備費を考えれば粗利10〜20%は欲しい。
- それに比べて、不動産仲介は 売買価格の3%(+6万円)が上限。
- 取引件数の限界
- 不動産売買は 同時並行で大量に処理できる業務ではない。
- 1人の担当者が抱えられる案件は限られ、1か月に数件まとまれば上出来。
- つまり、労働集約的でスケールしにくいビジネスモデル。
結論
不動産会社側からすれば、売買金額が高いほど収益は増え、売買金額が低いほど収益が出ない。
とは言え、物件やお客さんを選り好みするわけにもいかない。
従って、さまざまな金額帯の物件を仲介することで、収益のバランスを維持しているのが現状である。
一般客からすれば、仲介手数料が高いか、安いかは「対価に見合った価値を提供しているか」に尽きるであろう。
対価に見合った取引ができれば満足できるだろうし、対価に見合わない取引であれば、仲介手数料を割引されたところで満足できない。
仲介手数料が高いか?安いか?の温度差を埋めることは非常に難しく永遠のテーマのようにも感じる。
しかし、その温度差を少しでも埋めること。これが不動産業界全体の役務であると考える。
業界歴20年超の視点
個人的には、媒介報酬(仲介手数料)の自由化をおこない成功報酬を止めるべきだと考える。
なぜなら、現在の仕組みこそ、顧客の利益を毀損しているからだ。その理由は別の機会に譲るとする。
また、仲介業の闇についてもこのサイトで語っているので、他の記事を参考にされたい。





