地震から学ぶ「物件選び」の真髄 本当に高い資産価値とは?

公認 不動産コンサルティングマスターの藤村です。

令和6年、能登半島地震で被害に遭われた方に心よりお見舞い申し上げます。そして1日も早い復興を心よりお祈り申し上げます。

これから土地や住宅を購入される方におきまして、この地震を通じて学ぶべきことを、弊社の不動産コンサルタントから少しアドバイスをさせて頂きたいと思います。

今後、住宅の購入や土地の購入を考えられている方にとっては、絶対に知っておくべき内容を取りあげますので、最後まで目を通して頂けますと幸いです。

目次

土地選び

地盤の強度によって揺れは異なる

まず、土地は軟弱地盤を避け、できるだけ堅固な地盤を選ぶべきです。なぜなら軟弱地盤は地震に揺れに対する影響が大きいからです。

いくら耐震性の高い建物であっても、軟弱地盤であれば揺れが増幅されます。大きな地震が何度も襲ってくれば建物が倒壊する危険性が高まります。一方で、堅固な地盤は地震の揺れが軟弱地盤より小さいため、比較的安全と言えます。

地盤の強度を調べるには、以下の調査方法が挙げられます。

  • 周囲の地盤の状況を観察する
  • 国土地理院によるデータを確認する
  • 微動探査調査(地盤の揺れやすさや、地盤と建物の共振の危険性がわかる調査)を受ける等

液状化しやすい場所は避ける

次に液状化しやすい土地選びは避けましょう。

液状化とは地震によって地下水が動かされ、地中と混ざり合って地盤が液状化してしまう現象です。

液状化の影響

液状化現象は1964年の新潟地震で広く知られ、1995年の阪神淡路大震災では人工地や埋立地では甚大な被害をもたらしています。その他にも2011年の東日本大震災、2018年の北海道胆振東部地震でも液状化は起きました(震源地から60キロも離れた札幌市内でも液状化が起きています)。

いくら地震に強い建物であっても、土地が液状化してしまえば建物は傾き、建物に損傷が出れば使用できなくなります

大規模で堅固な建物は支持基盤まで大きな杭を打っているので、地盤が液状化しても傾斜を免れることもありますが、木造住宅は摩擦杭というものを使用しているケースが多いので被害を受けやすいです

液状化は主に平坦地低地埋立地地下水位が高い土地で起こりやすいと言われています。そして利便性の高い地域は低地や埋立地も多く、意外と液状化のリスクが高いです(たとえば駅近などは軟弱地盤が多く、郊外ほど地盤が強い傾向にあり、利便性と安全性は相反する地域が多いです)

液状化しやすい土地であるかどうかは、国土地理院や各自治体の液状化マップでチェックしておきましょう。

地盤改良は地震対策ではない

中には軟弱地盤でも「地盤改良をすれば問題ない」と言う方がおられますが、それは間違いです。

というのも地盤改良の多くは、杭打ち改良と呼ばれるものを使用しているからです。杭打ち改良は地盤の不同(傾き)を抑え、家の傾きを抑えるための役割りにしか過ぎません。

改良杭は、まさに筋交のない柱を地中に埋めているようなもの。地震が起きれば柱(杭)が傾いたり折れます。ですから「地盤改良しているので地震に対しても安心です」と言っている不動産営業マンがいたら注意が必要です(改良杭ではなく表層改良というものをおこなっているのでしたら話は別です)

土地は地盤で選べ

このような背景から考えると、土地選びは地盤選びであることがわかります。そして土地選びは、あなた自身やご家族が安全に安心して過ごすための重要なファクターです。

建物は建て替えられても土地は変えれません。液状化によって土地が使えなくなってしまえば資産価値は「ほぼゼロ」になります。

できるだけ軟弱地盤は避け、強い地盤を選びましょう。他にも崖や擁壁のある土地、土砂災害や津波の影響を受ける土地なども避けましょう

京都の不動産コンサルティングマスター
  • もっと土地選びについて知りたい方
  • 絶対に選んではいけない土地の共通点
  • 利便性と安全性を兼ね備えた土地探しをされたい方etc
不動産営業マンでは決して教えてくれない土地選びの勘所を知りたい方は、専門家によるアドバイス(有料)をご利用下さい。

建物選び

新築でも倒壊の危険

1981年と2000年に建築基準法が改正され「耐震性が強化」されました。2000年の建築基準法改正では「耐震等級が1〜3まで」設定され、より耐震性能の明確化がなされました。

建築基準法改正の沿革
  • 1981年以前:震度5強程度の地震に対して倒壊しない(耐震についてはあまり重要視されてこなかった)
  • 1981年以降:建築基準法の大改正「震度6〜7でも倒壊しない建物」
  • 2000年以降:連結金物の基準を強化/耐震等級1〜3を設定
  • 1981年(昭和56年)5月31日以前に建築確認申請が行われた建物が「旧耐震基準」
  • それ以降が「新耐震基準」
  • 2000年(平成12年)6月1日以降に建築確認申請が行われた建物が「2000年基準」となり、耐震等級1以上となる。
耐震等級等級の概要
等級1建築基準法の建物の強さ。数百年に1度程度発生する地震力に対して倒壊・崩壊しない程度
等級2建築基準法の1.25倍の建物の強さ。数百年に1度程度発生する地震力の1.25倍の力に対して倒壊・崩壊しない程度
等級3建築基準法の1.5倍の建物の強さ。数百年に1度程度発生する地震力の1.50倍の力に対して倒壊・崩壊しない程度

つまり、新耐震基準以降の建物は、震度6〜7程度の地震に対しても倒壊しないはずです。

しかしながら、今回の能登半島地震や、2016年の熊本地震では倒壊するケースが発生しています。棟数は少ないものの、新耐震基準の建物でも倒壊するケースが発生しました

理由はいくつか考えられますが、今回は3つに絞って解説していきます。

法律の問題

いくら新耐震基準とは言えど、現時点の建築基準法においては、震度6〜7程度の大きな地震が2回来る想定していないと言われています。

よって、熊本地震や今回の能登半島地震のように震度6、7クラスの地震が2回以上襲ってくれば倒壊する危険があります。

つまり、1回目の地震で疲弊した建物が、2回目以降の地震によって崩壊(または取り壊しをしなければいけないほどの損傷)した可能性が考えられます。

2016年熊本地震では、2000年基準の新耐震の建物でも倒壊しました(倒壊2.9%・倒壊はしていなくても取り壊しが必要4.1%)※一般社団法人日本建築学会の調査より

近年は建築基準法を超えた、大きな地震が何回来ても耐えうる住宅を提供しているメーカーもあります。ですが、一般的にはコスト面で高額になってしまうため、最低限の耐震性能しか満たしていない建物がほとんどだと推測されます。

設計の問題

木造2階建の建物は、建築基準法においては四号建築物とされ、基本的に構造計算を必要としません(構造計算とは地震や台風に耐えられるよう設計をおこなうこと)。よって地震に脆い設計がされていた可能性が考えられます(2025年より四号特例の法律が変わります)

ある建築士の話しでは、

  • 1階に広いリビングなどが設けられている住宅や、
  • 乗り直下率)の悪い間取り(通し柱が少ない間取りや、1階と2階の壁量のバランスが悪い間取り)は、

崩壊しやすいとのことです。

一方で、ガチガチに耐震設計をすれば大丈夫か?と言われたらそうでもないようで、やはりバランスが大切だと1級建築士の方はおしゃっていました。

分譲マンションやホテルなどで見つかった2005年の姉歯事件と呼ばれた構造計算書の偽造なんぞは論外です。

ある建設業界人の話によると、構造計算の偽造は一部の間では以前から常態化されていたのではないか?1995年阪神淡路大震災によって本来倒壊するはずのない建物が倒壊してしまったケースはおそらくあっただろう。とのこと。

それだけ、人の命よりも儲けが優先されてきている業界の闇も見えます。

施工の問題

今も昔も問題視されているのが施工不良です。たとえ新耐震基準の建物や新築住宅であっても、手抜き工事知識不足による施工ミス・不良があると耐震性は損なわれます

実際、住宅診断士によれば、新築住宅においても施工ミスや施工不良が散見されているとのこと。「新築住宅の8割は欠陥さくら事務所が指摘)」と言われても遜色のないレベルだと指摘しています(新築住宅の8割が欠陥なら既存住宅はどうなるのか…)

これは、施工管理不足や、職人の知識・経験不足コストカットによる短納期や施工レベルの低下怠慢などが背景にあります。木造在来工法だけでなく、地震に強いとされるツーバイフォー工法においても、施工不良(釘打ち不良や、釘の種類が間違っていたなど)が原因で、倒壊レベルに達した事例もあります。

これからこの業界はもっと職人不足が加速していきますので、いかに施工品質を安定させるかが喫緊の課題でしょう。

その他にも、メンテナンス不足による影響も考えられます。たとえば雨漏りを放置しているケース。雨漏りによって木部(特に構造部)が腐食したりシロアリを放置しておけばもちろん脆くなります。湿度が高ければ木部の含水率も変わってきますし、強度も変わってきます。

家を購入するなら住宅診断は必須

従いまして、いくら新耐震設計の住宅や新築住宅であっても100%安心はできないのが実情です。

住宅を購入する際は、たとえ新築住宅であっても住宅診断をおこなったうえで(中古住宅は必須)、購入の判断を下すべきです。

「この物件は耐震等級3ですから大丈夫ですよ」「この物件は、過去の地震に耐えてきたから大丈夫ですよ」なんて平気で口にする営業マンがいたら注意下さい。

現場重視で必ず住宅診断をおこなって現状を把握したうえで、購入判断をしましょう。「事件は会議室で起こっているのではない。現場で起きているんだ!」です。

建具の建て付けや、床の傾きだけでなく、基礎コンクリートの欠損や、金物ボルトの締め付け不足、耐震金物不足や耐震金物が梁や柱にめり込んでいるケース、これらの不具合があれば、本来の耐震性能を満たしません

このような事象は住宅診断をおこなわないと判明しないケースがほとんどです。よって、安心できる住宅を購入するなら、住宅診断は必須と言えます。

京都の不動産コンサルティングマスター
  • どんな建物なら安心できそうか?
  • 住宅診断士の選び方
  • 住んだ後の地震対策/火災・地震保険の選び方etc
これから何が起こるかわからない。そんなリスクの中で自分や家族を守りたい!そんな意識の高い方向けに有料アドバイスをおこなっています。

ちょっとコラム

「現代の建物について感じること」

私が常々思っていることがあります。それはなぜ、日本の建築物は「免震」ではなく「耐震」になってしまったのか?と言うことです。

耐震とは地震のエネルギーに耐える設計。免震とは地震のエネルギーを逃す設計です。ボクシングにたとえるなら、ストレートパンチを何度受けても耐えられる。それが耐震。一方免震は、ストレートパンチが来てもヒラリとかわす。いくら強靭な肉体を持っているボクサーでも、メガトン級のストレートパンチを何回も喰らっていれば、いつかは倒れます。しかし免震のようにストレートパンチがきてもかわすことができればダメージは受けません。

そもそも日本は地震が多く、日本古来の建築物は免震構造であったはずです。それなのにあえて「耐震」にした理由は何なのか?それを建築士に聞いても明確に答えられる人はほとんどいません。耐震でいくのか、免震でいくのか、議論がかわされた歴史はあるようですが、なぜ耐震になったのでしょうね。

コスト面の問題なのか?それとも都市部は密集地が多く、土地いっぱいに建物が建っていて免震すれば建物どうしが干渉してしまうからなのか?よくわかりません。

免震工法はあまり日本では普及していないのですが、私は免震工法こそ、地震大国から身を守る最良の手段だと思っています。それは私だけではないようです。

と書いているときに、ある方からの意見がありましたのでシェアしたいと思います。

免震ではなく耐震になったのは、木造建築が軽量化されたからだとのこと。本来、免震は重たい建物に効くようで、実際にビルや高層マンションに免震技術が使われているケースがありますね。

一方で重量の軽い木造住宅などは、耐震で足り、逆に免震すると耐風に問題が発生する。なぜなら、軽い建物に風が当たると常に揺れる建物になってしまうから。そのような背景から免震論ではなく耐震論になったのではないか?というお話しでした。

もう地震は怖くない!「免震住宅」という選択←外部サイトにリンクしています)

本当に資産価値が高い不動産選びを

利便性がすべてではない

本当に資産価値の高い不動産とは?|エフティマ不動産

あなたにとって資産価値の高い不動産とは、どんな不動産でしょうか?

一般的には、駅近や利便性の高い物件は資産価値が高いと言われています。ですが、住宅を買われる方の多くは、金儲けや、投資対象で不動産を買うわけではありません

もちろん、値上がりを期待するのも理解できます。しかし、何より健康で安全に安心して暮らせる物件が良いはず。だとしたら、災害から身を守れる物件を選ぶべきでしょう。

命がなければ意味はない

物件選びは安全性が9割|エフティマ不動産

先ほどもお伝えしましたが、土地の利便性と(地盤に対する)安全性は相反することが多々あります。よって、安全性を第一に選ぶなら、駅から徒歩圏外の場所も選択肢に入れてみてはいかがでしょうか?

いくら駅から近くて利便性が高いと言っても、災害に巻き込まれて命の危機に晒されては意味がありません

これは建物についても同じです。いくらオシャレで省エネ性能が高い住宅だったとしても、地震の脆い家なら安心できるとは言えません(もっともデザイン性と耐震性も反比例することも少なくありません)

ご家族を守るうえでも、災害に強い物件選びこそ、あなたにとって資産価値の高い不動産と言えるのではないでしょうか?

そんな家族思いのあなた。そして見栄より安全性を優先するあなたのお役に立てましたら幸いです。

京都の不動産コンサルティングマスター
  • 売ることが最優先の不動産営業マンとは一線を画すアドバイスを受けたい方は他にいらっしゃいませんか?
公認の不動産コンサルティングマスターが、資産価値の高い不動産選びのお手伝を致します。

参考動画

新耐震基準でも倒壊した理由

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今後の不動産・建築の選び方

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液状化で傾いた家は直せるのか?

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